変な肉屋のはなし (べこや)
松本のコンサートに行く途中の山の根の道に、実は変な肉屋がある。
月に3日しか商売しない肉屋なのである。
今月の営業日・・・お、今日ではないか! これは寄るしかない。
実は僕は初めてここを訪れた。というのは、しばらく前にこの店の肉をすき焼きで食べたのだが、その味と来たら、比べようもないほどジューシーだった。最初はすき焼きで食べていた僕は肉を見て「この肉なら生でも食べられそうだ。」と言った。そしてショウガ醤油を用意して、迷いもなく口に運んだ。見事にサシの入った上等な肉のあの味が忘れられなかったのだ。
訪れた店舗は本当に小さな家だった。引き戸を開けて中に入ると、既に買い物を終えたお客さんが1人。お店の人は何と4人いた。父、母、息子、娘もしくは息子の嫁さんだ。売っているのは牛肉のみ。鹿児島、宮崎、そして地元信州は木曽という有名な肉牛の産地(もちろん特定の酪農家だ)から、子牛を買い付けて、自分の農場で手塩を掛けて育てた牛の肉の直売所だ。
竹渕さん(父)に色んな話を聴いた。
黒毛和牛を150頭ほど育てているとのこと。それらは大阪などの大都市の料亭と直に契約されており、残念ながら地元の人の口には入らなかったそうだ。何とか地元の人に食べてもらえないかと考え、地元の協力もあってやっと牧場直営の店を構えられたのが2006年の夏。家族で行なっている牧場経営が主なので、日を限定して店を開くのが精一杯。そりゃそうだ、牛には土日もないからね。だからこうして第4の週末だけ店を開く。店に出るのは竹渕さんが選び抜いた和牛の肉だ。
僕は彼に「初めてこの肉を食べたときに、生で食べたんだ。」という話をした。彼はちょっと困った顔をした。僕は慌てて言葉を足した。「たとえ何かあったとしても、店の名前は絶対に出さないし、僕の責任のもとでショウガ醤油で食べたんだからね。」と補足した。僕の肉好きを見抜いてくれた。
夜のコンサートに行く途中ということもあって、殆ど売れてしまったらしく、残ってたのはサーロインが10切くらいと、モモが4切。ダイエット中の僕はちょっと考えた末に「このモモ肉を下さい。」と言った。モモなんだが、美しいサシが入っている。「何食べさせてるの? リンゴとかビール? まさかサーロイン肉を食べさせてたりはしないよね?」 いきなり和んだ。日本ではやはり動物飼料は厳しいらしく、植物飼料で育てているようだ。だけど美味い肉は本当に綺麗だよね。
その日は帰りが遅くなってしまったので、後日、ステーキにして食べた。焼き加減は、レアに近いミディアム。サーロインは肉汁が漏れやすいから、焼きは最新の注意を払うが、モモは中に肉汁を閉じ込めることができるので、あまりシェフの腕には左右されないかもしれない。買った肉はやや厚めだったから、しっかり熱は肉の中心まで届かせたい。でもレアっぽいのが好きな僕は、この焼き加減に拘る。モモは幾分回りに焦げ目がつくくらいが一番美味いと思う。うるさいオジサンだ。僕は決して美食家ではないけれど、やっぱりいい食材はいい状態で食べたいと思う。冷えたらだめ。蓋をして熱がよく回るようにしたパンから肉を下ろし、すぐ食べる。極めて当たり前なこと・・・。
お~、モモとは思えない柔らかな食感だ。適度に入ったサシの加減なのか、甘みを含んだジューシーさが醸し出されて、それは至福な時を過ごした。サーロインはさぞ美味いだろうと容易に想像がついたさ。今度は買うぞ、そう決めた。
( 5月28日 記 )
月に3日しか商売しない肉屋なのである。
今月の営業日・・・お、今日ではないか! これは寄るしかない。
実は僕は初めてここを訪れた。というのは、しばらく前にこの店の肉をすき焼きで食べたのだが、その味と来たら、比べようもないほどジューシーだった。最初はすき焼きで食べていた僕は肉を見て「この肉なら生でも食べられそうだ。」と言った。そしてショウガ醤油を用意して、迷いもなく口に運んだ。見事にサシの入った上等な肉のあの味が忘れられなかったのだ。
訪れた店舗は本当に小さな家だった。引き戸を開けて中に入ると、既に買い物を終えたお客さんが1人。お店の人は何と4人いた。父、母、息子、娘もしくは息子の嫁さんだ。売っているのは牛肉のみ。鹿児島、宮崎、そして地元信州は木曽という有名な肉牛の産地(もちろん特定の酪農家だ)から、子牛を買い付けて、自分の農場で手塩を掛けて育てた牛の肉の直売所だ。
竹渕さん(父)に色んな話を聴いた。
黒毛和牛を150頭ほど育てているとのこと。それらは大阪などの大都市の料亭と直に契約されており、残念ながら地元の人の口には入らなかったそうだ。何とか地元の人に食べてもらえないかと考え、地元の協力もあってやっと牧場直営の店を構えられたのが2006年の夏。家族で行なっている牧場経営が主なので、日を限定して店を開くのが精一杯。そりゃそうだ、牛には土日もないからね。だからこうして第4の週末だけ店を開く。店に出るのは竹渕さんが選び抜いた和牛の肉だ。
僕は彼に「初めてこの肉を食べたときに、生で食べたんだ。」という話をした。彼はちょっと困った顔をした。僕は慌てて言葉を足した。「たとえ何かあったとしても、店の名前は絶対に出さないし、僕の責任のもとでショウガ醤油で食べたんだからね。」と補足した。僕の肉好きを見抜いてくれた。
夜のコンサートに行く途中ということもあって、殆ど売れてしまったらしく、残ってたのはサーロインが10切くらいと、モモが4切。ダイエット中の僕はちょっと考えた末に「このモモ肉を下さい。」と言った。モモなんだが、美しいサシが入っている。「何食べさせてるの? リンゴとかビール? まさかサーロイン肉を食べさせてたりはしないよね?」 いきなり和んだ。日本ではやはり動物飼料は厳しいらしく、植物飼料で育てているようだ。だけど美味い肉は本当に綺麗だよね。
その日は帰りが遅くなってしまったので、後日、ステーキにして食べた。焼き加減は、レアに近いミディアム。サーロインは肉汁が漏れやすいから、焼きは最新の注意を払うが、モモは中に肉汁を閉じ込めることができるので、あまりシェフの腕には左右されないかもしれない。買った肉はやや厚めだったから、しっかり熱は肉の中心まで届かせたい。でもレアっぽいのが好きな僕は、この焼き加減に拘る。モモは幾分回りに焦げ目がつくくらいが一番美味いと思う。うるさいオジサンだ。僕は決して美食家ではないけれど、やっぱりいい食材はいい状態で食べたいと思う。冷えたらだめ。蓋をして熱がよく回るようにしたパンから肉を下ろし、すぐ食べる。極めて当たり前なこと・・・。
お~、モモとは思えない柔らかな食感だ。適度に入ったサシの加減なのか、甘みを含んだジューシーさが醸し出されて、それは至福な時を過ごした。サーロインはさぞ美味いだろうと容易に想像がついたさ。今度は買うぞ、そう決めた。
( 5月28日 記 )
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この記事へのコメント
確かに「変な」というか不思議なお店です。
あの道を通るたび、看板が気になっていました。でもお店らしきものは、道沿いには見当たらず、お肉屋さんとはわからないまま、焼肉屋さんか何かと思い込んでいたのですが、ひょっと思いついて看板からしばらく山のほうに向かってみると、ありました!
でも普通の家みたい・・・???
そして初めて食べたときの感動!!ちょっと半端じゃありませんでした。とにかくおいしい!!
初めての時はそのお値段にはちょっと躊躇しましたが、食べてみて納得。普段我慢して月に一度でもここのお肉を食べたい!と心底思いますね(笑)
ご家族で育てているこだわりの牛、ここまでくれば、ただただ感服するのみ。
来月の開店日もしっかりチェック済みです。
aostaさん、ありがとうございます。
開店当初は毎週末にお店を開いていたようですね。あのかわいい息子さんが奮闘していたようですが、やっぱり本業の牧場経営の方が大変なのでしょう。基本的には第4金土日ということのようです。でも変更もあるかもしれませんので、来月の開店日チェックは正解でしょう。
松本の友達に聞いてみたら、このお店のこと、ちゃんと知っていました。夕方には品数が激減する理由の裏づけです。