◆IL DIVO◆ 『音楽史 グレゴリオ聖歌からバッハまで』 (ルネサンス)
≪生演奏を公開しています≫
"Masterpieces of Music Before 1750" by Carl Parrish and John F. Ohl 2. Renaissance
URL : http://papalin.yas.mu/W705/#M102
◇公開日: 2011年10月31日
◇演奏時間: 23分17秒
◇録音年月: 2011年10月 (50歳)
上のアルファベットの曲目名を
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時代は、中世からルネサンスへと移ります。
話はいきなり脱線しますが、欧州の中世のことを
ゴシックということがありますが、この呼び方は、
「日本海」同様、ある国や地域や人々によっては
不快に感じる表現なのでしょうか?
メディーバルが正式な英語表現なのでしょうね。
さて、ルネサンス音楽の特徴、そしてその魅力とは一体何でしょう。
私は、創作の対象が神から解き放たれて、生々しい人間になった --- それをルネサンス(回帰)と呼ぶのかもしれません --- 音楽だと思っています。
もちろん前後の時代と同じように、そこには神に真摯に立ち向かう作曲家の姿も当然ありますが、それだけが音楽の対象ではなくなった・・・と言った方が、より正しい表現かもしれません。人間は恋もする、嫉妬もする、迷ったり、猪突猛進してしまったり、ときには侮ったり、陥れたり。神ならば決してしないであろうことを平気でしてしまう生き物です。音楽も、そうした人間にスポットを当てて、生々しくなったように感じます。
ときにその音楽はエロティックでさえあります。同時代の絵画や彫刻を思い起こせば、信仰の対象であった厳かな神や天使たちでさえ、みな裸にしてしまったのですものね。ルネサンスに続くバロックやロマン派の音楽は、悲も喜も優美に着飾っているいるだけで、本当の姿や心の露呈はないように感じるのですが、それは言いすぎでしょうか。ルネサンス音楽の真の魅力は、品行方正が民族の特徴とまでなってしまった日本人だと直訳できなかった世俗歌曲に代表されるような人間臭さだと感じています。
楽譜 ⇒ Amazon
古本 ⇒ スーパー源氏
20. トマス・クレキョーン(?-1557) シャンソン<ほかない喜びのために>
Tomas Crequillon (d. c.1557) Chanson, "Pour ung plaisir"
ルネサンス音楽の到来と言っても、ある日突然音楽がガラリと変わったわけではありません。一つ前のジョスカンを聴いてから、このトマスを聴いても、劇的な違いはないでしょう。学者は、何かをもって分類、すなわち時代を区別しないといけないのですね。ある人は一つ前のジョスカンを盛期ルネサンスの作曲家と定義します。ジョスカンのこのモテットは、その後のルネサンス音楽のあらゆる手法を既に踏襲していたということが説の根拠のようです。さてこのトマス・クレキョーンの曲ですが、実は次の曲とのセットで重要なのだと思います。まずはお聴き下さい。
21. A・ガブリエリ(1510頃-1586) <ほかない喜びのために>によるカンツォーナ・フランチェーゼ
Andrea Gabrieli (c.1510-1586) Canzona, francese deta "Pour ung plaisir"
あれ、これは一つ前の曲と同じじゃないの? 正解です。イタリアではフランスのシャンソン(歌)が人気だったので、イタリアの作曲家は、それらを鍵盤楽器やリュートのための器楽曲に編曲したようです。原曲のトマス・クレキョーンの曲は、相当な人気だったようです。カンツォーナ・フランッチェーゼの登場ですね。ちなみに私の演奏では、ガブリエリの曲の方を4フィートで演奏させ、そのあとに、トマス・クレキョーンの曲(8フィート)と一緒に演奏したものを続けて載せています。
22. リュートのための舞曲(1550頃) <王侯の舞曲と後奏舞曲>
Lute Dances (c.1550) "Der Prinzen-Tanz; Proportz"
16世紀後半のリュートは、18世紀だと鍵盤楽器の役割を果していたのはご存知かと思います。つまりコンサート・マスターですね。今の巨大なオーケストラですと、差し詰め指揮者の役割ですね。現代の指揮者を別にすれば、リュートも鍵盤楽器も、それ一台で旋律から伴奏まで全てをこなしてしまうミニ・オーケストラです。そのリュートのために書かれた音楽がこれですが、当時はリュート独特のタブラチュアという記譜法で書かれていました。その名残りは現代のギター譜面にも残っています。幸いこの本では五線譜で掲載されていましたので、こうして演奏することができました。前半後半で音楽が変わるスタイルは、パヴァーヌとガリヤルドなんかもそうですね。流行していたようです。後奏で「亀田のあられ」が登場します。
23. オルランドゥス・ラッスス(1532-1594) モテット<わが心いたくうれひて>
Orlandus Lassus(1532-1594) Motet, "Tristis est anima mea"
こういう曲、大好きです。と、いきなり感情に走ってしまいましたが、ネーデルランドの天才作曲家ラッススのモテットは完成され過ぎています。中世の音楽とルネサンスの音楽の最大の違いは、完成度にもあるかもしれません。中世のそれが稚拙というわけではないのですが、ルネサンスの音楽には現代人の私たちが聴いて不快と感じる和音はないし、一方では音として表されるだけでない緻密な設計図が楽譜の裏に隠されているし、非の打ち所がありません。そういえばルネサンス時代の絵画や彫刻もそうですね。そういう時代だったのでしょうか。
24. パレストリーナ(1525-1594) ミサ<きたれ、汝キリストの花嫁>から <神の小羊>第1
G. P. da Palestrina(1525-1594) Agnus Dei(1) from the Mass "Veni sponsa Christi"
この本はすごいなぁと思うのですよね。ラッススもパレストリーナも、たった一曲を選び抜いて譜例として掲載していることがすごいと思います。パレストリーナは、教会音楽に専念した、当時としては珍しい人だったようです。彼のミサ曲は今の日本でも大流行で、パレストリーナしか歌わないという合唱団すらあるくらいです。このミサ曲は、当時は当たり前だった先人の曲のモチーフを使って作曲されています。しかし、パレストリーナの素晴しさは、大河にゆったりと蕩う小船のような音楽。そこには現代人のような、いやロマン派の音楽でもいい、それらのようなせっかちなデュナーミクもありません。いわば大人の音楽と言っていいのかも知れませんね。つい歌ってしまいました。混声ではなくて、どうもすみません。(^_^;)
25. ウィリアム・バード(1542-1623) モテット<われは生けるパンなり>
William Byrd(1542-1623) Motet, "Ego sum panis vivus"
ビートルズと、その地位を競っているイギリス最大の作曲家、バードの登場です。正直言いますと、私はバードの良さは良くわかりません。歌の場合は、詩を重んじるためか、小節が不規則な長さとなることが多いのも彼の特徴の一つです。器楽で演奏する場合は、その是非がよくわからないのですね。歌ってみれば・・・ということになりましょうか。よくこの時代の音楽は、上昇音階は天に昇り(あるいは天を指し)、下降音階は地を表すとされますが、この曲はまさにそう。詞の言葉に対して素直に音がつけられているといった感じです。そうですね、私の好きな現代を生きる合唱曲の作曲家、新実徳英さんや木下牧子さんのセンスと似ていますね。(^-^ )
26.鍵盤楽器のためのカンツォーナ(17世紀はじめ) <使徒書簡のためのカンツォーナ>
Keyboard Canzona(early 17th c.) "Canzona per l'epistola"
鍵盤楽器のための曲の登場です。でも歴史的に初めてということではなく、この本の中では初めてという意味です。先に書きましたように、鍵盤楽器はリュートの地位を奪いました。理由は何でしょうか。一つは音域の広さでしょうか。確かにこの曲は、先のリュートのための曲より遥かに広いダイナミック・レンジです。歌を器楽曲にアレンジする方法も、単なる装飾的なものから次第に凝ったものとなりました。これらはやがて教会ソナタに発展したり、リチェルカーレやフーガに発展していきました。いわばその先鞭をつけた曲ということができましょうか。この曲、最後のトッカータ風の終わり方が特徴的ですね。
27. ルーカ・マレンツィオ(1560頃-1599頃) マドリガル<あなたと別れるなら、わたしは死のう>
Luca Marenzio(c.1560-c.1599) Madrigal, "S'io parto, i' moro"
ルネサンスの豊かな時代は、私のような素人の音楽愛好家を育てました。彼らが楽しんだ音楽がこの時代で言うところのマドリガルです。歌詞は恋愛もの。JポップやKポップと同じですね。単純でただ楽しめるようなマドリガルとは一線を画した、ちょっと気を利かせた作品を作ったのが、このイタリア人のマレンツィオでした。あからさまな詩を一部伏字にしたり、緊張の高まりを音で表現したりで、そこには知性を感じます。日本の安っぽいテレビ番組の"ピー"とは違いますね。
28. ジョン・ベネット(1575頃-1625頃) マドリガル<サーシスよ、お眠りかい>
John Bennet(c.1575-c.1625) Madrigal, "Thyrsis, Sleepest Thou?"
このイギリスの作曲家を私は知りませんでしたが、17世紀のイギリスのマドリガル曲集にはよく登場する作曲家だそうです。特徴は、比較的軽い種類のマドリガルを技巧的にうまくこなすことだと書かれていました。演奏してみましたが、あまり印象に残っていないです。唯一記憶に残っているのは、カッコウが頻繁に登場することでした。
29. ジャイルズ・ファーナビー(1560頃-1600頃) ヴァージナルズの変奏曲<別れるのはいや>
Giles Farnaby(c.1560-c.1600) Variations for Virginals, "Loth to Depart"
バード、フィリップス、ファーナビー、トムキンズ、ギボンズらイギリスの作曲家の作品は、フェルメールの絵にも登場するヴァージナルズと呼ばれた、横長長方形のハープシコード風の楽器と密接な関係があり、この楽器の特性を活かしたもののようです。その特性とは、高度な名人芸が披露できる楽器というところにあるようです。そしてその名人芸をもっとも披露することができるのが変奏曲というわけです。さてファーナビーのこの曲ですが、以前にも演奏していますね。こうして本と出会い、曲の生い立ちを知ることによって、私の演奏も変わっていくのが自らの楽しみの一つでもあります。
あ~、今回も、疲れた~~~。
Papalinの多重録音でお聴き下さい。m(_ _)m
曲目
20. トマス・クレキョーン(?-1557) シャンソン<ほかない喜びのために>
Tomas Crequillon (d. c.1557) Chanson, "Pour ung plaisir"
21. A・ガブリエリ(1510頃-1586) <ほかない喜びのために>によるカンツォーナ・フランチェーゼ
Andrea Gabrieli (c.1510-1586) Canzona, francese deta "Pour ung plaisir"
22. リュートのための舞曲(1550頃) <王侯の舞曲と後奏舞曲>
Lute Dances (c.1550) "Der Prinzen-Tanz; Proportz"
23. オルランドゥス・ラッスス(1532-1594) モテット<わが心いたくうれひて>
Orlandus Lassus(1532-1594) Motet, "Tristis est anima mea"
24. パレストリーナ(1525-1594) ミサ<きたれ、汝キリストの花嫁>から <神の小羊>第1
G. P. da Palestrina(1525-1594) Agnus Dei(1) from the Mass "Veni sponsa Christi"
25. ウィリアム・バード(1542-1623) モテット<われは生けるパンなり>
William Byrd(1542-1623) Motet, "Ego sum panis vivus"
26.鍵盤楽器のためのカンツォーナ(17世紀はじめ) <使徒書簡のためのカンツォーナ>
Keyboard Canzona(early 17th c.) "Canzona per l'epistola"
27. ルーカ・マレンツィオ(1560頃-1599頃) マドリガル<あなたと別れるなら、わたしは死のう>
Luca Marenzio(c.1560-c.1599) Madrigal, "S'io parto, i' moro"
28. ジョン・ベネット(1575頃-1625頃) マドリガル<サーシスよ、お眠りかい>
John Bennet(c.1575-c.1625) Madrigal, "Thyrsis, Sleepest Thou?"
29. ジャイルズ・ファーナビー(1560頃-1600頃) ヴァージナルズの変奏曲<別れるのはいや>
Giles Farnaby(c.1560-c.1600) Variations for Virginals, "Loth to Depart"
使用楽器 (440Hz)
ソプラノ モーレンハウエル グラナディラ
アルト メック オリーブ
テナー 全音 チェリー
バス メック メイプル
グレートバス キュング メイプル
コントラバス キュング メイプル
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この記事へのコメント
ichiさん、ありがとうございます。
座布団10枚
ちゃんとブログも書きますので、もう少しだけ時間を下さい。
m(_ _)m
ichiさん、ありがとうございます。
それはよかったですね。5ゲームですか。
私は12~13ポンドのボールで3ゲームが適量です。
体力ありますね。