和音のはなし
和音の作り方に関して、気がついたことがあります。
多重録音での私のノウハウの一つ・・・というお話なので、リアルのアンサンブルでも応用できるかどうか、ちょっと微妙ですが、応用できないことはないと思って書きます。
最近の私の多重録音は、全て高音側から重ねて行きます。それは、従来私もそうしていた下から重ねて行くのよりも良いハーモニーが作りやすく、実際に録音した曲を聴いてみても、昔の録音よりはるかに良くなっているように自分では思っています。今までは直感的にそう感じていたのですが、一つその理由がわかったような気がします。今頃気づいたのかとお叱りを受けそうですが、覚悟の上で書きます。
北御門文雄さんが編集されたリコーダー四重奏曲集[初級編]の前書きに、
差音についての丁寧な解説があります。お手元にない方のために左に載せました。
クリックして拡大してご覧下さい。内容をご存知の方は読み飛ばして下さい。
【 図1 】
復習を兼ねてになりますが、2本のソプラノ・リコーダーで、つまり2人の奏者で
右の音を出してみますと・・・
【 図2 】
ソとミがドミソのソとミの関係になったときに、実際には出していない音なのに、
右図の低いドの音が聴こえます。これが差音(2つの音の周波数の差の音)です。
ちなみに、どちらか1人の音を固定させて(安定した音を出して)、もう1人の人が
息の量を変えて音高を変えると、差音として聴こえてくるのは、シの音や、ド#の音
に近いような、ちょうどトロンボーンのグリッサンドのように連続して音高が変わって
行きます。
【 図3 】
これがいわゆる差音のお話なのですが、今回JAZZアレンジの曲を沢山演奏して
ふっと気づきました。右図のようなハ長調の基本和音(C-dur)を4つの実際の音で
演奏する場合は、録音を下から重ねても、上から重ねてもうまく行くのです。
問題なのは次に示した図4のような場合です。
【 図4 】
高音側の2本のリコーダーは、上の例と全く同じように、ソとミを奏でます。ところが、
この場合の和音はホ短調の基本和音(E-moll)の転回形(※2)です。もうお気づき
かも知れませんが、上の2本がドミソのソとミの関係になったときに、図2に示した低い
ドの音が聴こえてしまうのです。実際に他のリコーダーが出している音はシ(H)です。
下から重ねていくとこの二つの音が喧嘩してしまうのです。更には、バスリコーダーなどで実際に出しているシ(H)の音の倍音も出ています。その倍音の中にはソ(G)とミ(E)の中間のファ#(Fis)の音も含まれているのです。これは実際に出しているソ(G)の音と半音でぶつかりますから、かなり厄介です。
こういう状況の中で、高音側の音を多重録音で最後に演奏すると、出すべき音を一体どこにどう収めたら良いものかと迷ってしまいます。その結果、美しい和音とは呼べないような、何とも怯んだ音になってしまって、そこで音楽が破綻してしまっていたのです。
高音側から順に重ねていくと、C-durだろうが、E-mollだろうが、高音側の2つの音は、とりあえず自信をもって、ドミソのソとミの関係で演奏することができます。厳密に言うと、「C-durのときのソとミの関係」と、「E-mollのときのソとミの関係」は異なるのですが、迷わず演奏できる、言い換えると、自信なさげのひ弱な音を出さないで演奏できるのが、上から録音を重ねていく方法である・・・ということがわかりました。
多分、リコーダーのようなピュアな波形で、ハモっているかハモっていないかが誰にでもバレてしまうような楽器だから、こんな心配をしなくてはいけないのだと思います。ちなみに構造的にピアノはノンピュア、チェンバロはピュアな響きがします。それだけチェンバロの調律(工数ではありませんよ)は大変だと思います。その大変さを演奏中に常に意識していなくてはならないのが、リコーダー・アンサンブル・・・ということなのですね。
な~んだ、つまらないお話・・・でしたか。(^_^;)
お詫びのしるしではありませんが、おまけです。
字で書くより、耳で聴いた方が早いかと思いまして、差音の実験です。
ソとミの関係がドミソにおける純正の響きになったときに、差音として下のドの音が聴こえます。
ソの音高を固定させるために、鍵盤ハーモニカを使い、リコーダーでミの音を入れました。
最初はかなり高い音から入って行って、ちょうど6秒~10秒くらいのところでハモります。
パソコンのスピーカーの性能にもよりますが、下のドの音が聴き取れますでしょうか?
私のパソコン付属のちゃちなスピーカーからも聴こえました。ボリュームを上げた方が聴こえます。
★ こちらの「実験2」で お聴き戴けます ★
※1 図1~4で、オクターブ記号(ト音記号の上の8)が抜けているのはご容赦下さい。
※2 図4の和音は、E-minorの3和音の派生形で、第2転回形(46の和音:第5音を最低音にするように転回した形)と呼ばれます。
当然のことでしょうけれど、優れた作曲家、編曲家は、こうした差音や倍音のことをしっかり考えて、音楽づくりをしていくのでしょう。その結果が、優れた作曲家、編曲家なのでしょうね。メロディの美しさだけではなく。
多重録音での私のノウハウの一つ・・・というお話なので、リアルのアンサンブルでも応用できるかどうか、ちょっと微妙ですが、応用できないことはないと思って書きます。
最近の私の多重録音は、全て高音側から重ねて行きます。それは、従来私もそうしていた下から重ねて行くのよりも良いハーモニーが作りやすく、実際に録音した曲を聴いてみても、昔の録音よりはるかに良くなっているように自分では思っています。今までは直感的にそう感じていたのですが、一つその理由がわかったような気がします。今頃気づいたのかとお叱りを受けそうですが、覚悟の上で書きます。
北御門文雄さんが編集されたリコーダー四重奏曲集[初級編]の前書きに、
差音についての丁寧な解説があります。お手元にない方のために左に載せました。
クリックして拡大してご覧下さい。内容をご存知の方は読み飛ばして下さい。
【 図1 】
復習を兼ねてになりますが、2本のソプラノ・リコーダーで、つまり2人の奏者で
右の音を出してみますと・・・
【 図2 】
ソとミがドミソのソとミの関係になったときに、実際には出していない音なのに、
右図の低いドの音が聴こえます。これが差音(2つの音の周波数の差の音)です。
ちなみに、どちらか1人の音を固定させて(安定した音を出して)、もう1人の人が
息の量を変えて音高を変えると、差音として聴こえてくるのは、シの音や、ド#の音
に近いような、ちょうどトロンボーンのグリッサンドのように連続して音高が変わって
行きます。
【 図3 】
これがいわゆる差音のお話なのですが、今回JAZZアレンジの曲を沢山演奏して
ふっと気づきました。右図のようなハ長調の基本和音(C-dur)を4つの実際の音で
演奏する場合は、録音を下から重ねても、上から重ねてもうまく行くのです。
問題なのは次に示した図4のような場合です。
【 図4 】
高音側の2本のリコーダーは、上の例と全く同じように、ソとミを奏でます。ところが、
この場合の和音はホ短調の基本和音(E-moll)の転回形(※2)です。もうお気づき
かも知れませんが、上の2本がドミソのソとミの関係になったときに、図2に示した低い
ドの音が聴こえてしまうのです。実際に他のリコーダーが出している音はシ(H)です。
下から重ねていくとこの二つの音が喧嘩してしまうのです。更には、バスリコーダーなどで実際に出しているシ(H)の音の倍音も出ています。その倍音の中にはソ(G)とミ(E)の中間のファ#(Fis)の音も含まれているのです。これは実際に出しているソ(G)の音と半音でぶつかりますから、かなり厄介です。
こういう状況の中で、高音側の音を多重録音で最後に演奏すると、出すべき音を一体どこにどう収めたら良いものかと迷ってしまいます。その結果、美しい和音とは呼べないような、何とも怯んだ音になってしまって、そこで音楽が破綻してしまっていたのです。
高音側から順に重ねていくと、C-durだろうが、E-mollだろうが、高音側の2つの音は、とりあえず自信をもって、ドミソのソとミの関係で演奏することができます。厳密に言うと、「C-durのときのソとミの関係」と、「E-mollのときのソとミの関係」は異なるのですが、迷わず演奏できる、言い換えると、自信なさげのひ弱な音を出さないで演奏できるのが、上から録音を重ねていく方法である・・・ということがわかりました。
多分、リコーダーのようなピュアな波形で、ハモっているかハモっていないかが誰にでもバレてしまうような楽器だから、こんな心配をしなくてはいけないのだと思います。ちなみに構造的にピアノはノンピュア、チェンバロはピュアな響きがします。それだけチェンバロの調律(工数ではありませんよ)は大変だと思います。その大変さを演奏中に常に意識していなくてはならないのが、リコーダー・アンサンブル・・・ということなのですね。
な~んだ、つまらないお話・・・でしたか。(^_^;)
お詫びのしるしではありませんが、おまけです。
字で書くより、耳で聴いた方が早いかと思いまして、差音の実験です。
ソとミの関係がドミソにおける純正の響きになったときに、差音として下のドの音が聴こえます。
ソの音高を固定させるために、鍵盤ハーモニカを使い、リコーダーでミの音を入れました。
最初はかなり高い音から入って行って、ちょうど6秒~10秒くらいのところでハモります。
パソコンのスピーカーの性能にもよりますが、下のドの音が聴き取れますでしょうか?
私のパソコン付属のちゃちなスピーカーからも聴こえました。ボリュームを上げた方が聴こえます。
★ こちらの「実験2」で お聴き戴けます ★
※1 図1~4で、オクターブ記号(ト音記号の上の8)が抜けているのはご容赦下さい。
※2 図4の和音は、E-minorの3和音の派生形で、第2転回形(46の和音:第5音を最低音にするように転回した形)と呼ばれます。
当然のことでしょうけれど、優れた作曲家、編曲家は、こうした差音や倍音のことをしっかり考えて、音楽づくりをしていくのでしょう。その結果が、優れた作曲家、編曲家なのでしょうね。メロディの美しさだけではなく。
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この記事へのコメント
どうしてもきれいにはもらないことがありました。
こういうことなのでしょう…
izumiさん、ありがとうございます。
私はmidiとかの電子音源には全く疎くていけないのですが、私もよく楽譜をお借りするエオリアン・コンソートの知足庵さんが書かれていましたが、楽譜を作成してそれを電子音で演奏させるときに、音律を決めたり調整したりするそうです。彼が作製するルネサンスやバロック時代の音楽の楽譜を平均律で鳴らしても、当時の音楽の雰囲気が出ないということを感じられて、そうされているのだと思います。へぇ、そこまでやられているんだと、感心してしまいました。
PS:izumiさんで宜しいですよね? (^-^ )
P-san、ありがとうございます。
mixiでのコメントだと、長くは書けませんので、こちらでちょっと補足させて下さい。アンサンブルの練習で「下から重ねていく」ことはよくありますし、私も「ベース音に乗っかって」というようなことを言うことがあります。これは上の図で言いますと、図3のような場合です。ところが、図4のような音の場合、下から重ねていくと、差音や倍音の関係で上手くないことがわかった・・・というのも、今回のブログの伏線でした。
よくアンサンブルで「ところどころにハモったところがあって気持ちよかった」というお話を聴きますが、ルッキのようなプロだと、金太郎飴のように、どの縦の線を切ってみてもハモっているんですね。それを目指すにはどうしたらいいのか、いつも考えています。打率を上げて、最終的には10割にしたいものですね。
P-san、もう一つ、補足です。
本村睦幸先生が、ツイッターで先日書かれていたことですが、私もそうだよねって思いましたので、ご紹介します。
| 普通の調性的な曲の場合、聴く人が「音色が汚い」と感じる音って、
| 多くの場合、実は音程が悪いということだと思われる。倍音の含まれ
| 方のせいで音程自体があいまいな音というのはあるけど、笛では
| 普通に吹く限りあまりそういう音は出ないし、音色より音程と思って
| 練習すると解決することは多い。
はい!izumiです(*^_^*)
izumiさん、ありがとうございます。
izumiさんが、しじみか、ちぢみになっちゃったのかと・・・。(o^<^)o クスッ
ichiさん、ありがとうございます。
人間離れですか。かといって、神にも獣にもなれません。(^_^;)
恐らくですが、よく響くところで演奏すればするほど、差音や倍音は聴こえますので、そういう環境にもよると思います。ソプラノのあの甲高い音で、上のミとファ#とソが一緒に鳴ると(ファ#は倍音としてですが)それは不快指数100です。
> 何が起きているかわからない自信があります。
大爆笑してしまいました。
では今度そういう状況を作って差し上げますね。
1泊2日の体験コースにて。(^v^)フフフ