◆IL DIVO◆ 3. 踏みならすメロディと輪唱、下行オクターヴ
≪毎日がコンサートの本番です≫

Die Vier Weltalter Der Musik (Walter Wiora) 3. Melody with stamping, Round and Octave to lower direction
URL : http://papalin.yas.mu/W708/#M003
◇公開日: 2012年12月19日
◇演奏時間: 1分57秒
◇録音年月: 2012年12月
上のアルファベットの曲目名をクリックして、
Papalinの音楽室でお聴き下さい。(視聴・試聴)
これ以降、譜例4以降の各曲に関しては、個別の説明は本文中にありません。本文で直接的ではないにしても、関連すると思われる箇所の引用はしますが、著者がなぜその譜例を載せたのかは私の想像するところでしかありません。そのことを予めお断りしておきます。
ということで、譜例の第3節となる「踏みならすメロディと輪唱、下行オクターヴ」に関してですが、おそらくこの文章を実際の音楽で説明するために載せられたものだと理解して、本文から引用します。
初歩的な形のポリフォニーもまた、先史時代にまで遡っている。このことは、それがいわゆる古代的な諸種族のあいだに、驚くほど広く分布していることによって示されているのである。このような実例としては、アフリカのマラッカに住むピグミー、ブッシュマン、その他のもの(譜例3以降)を挙げておこう。ここでは、本来の形での応唱的な歌い方やコーラス的な歌い方、例えば3和音の中での固定した回転が、掛け声を伴った形で、また手拍子や足踏みによって支えられ、保存されている。また、平行的な歌い方も保存されている。これは中性に平行オルガヌムとしていっそう前進したものである。またさらに、初歩的な形におけるドローンやカノンさえ保存されているのである。
私はこのことにはたいそう驚きました。西洋の音楽史を紐解く中で、単旋律が多声音楽に成長していく課程を知りました。そして初期の多声音楽(ポリフォニー)が、如何に初歩的なものだったかも知りました。でも西洋の音楽はそこから様々な発展をしていきました。それらに関してはここでは触れませんが、西洋で多声音楽と呼ばれるものがおこったのが12世紀頃とされていますから、世界各地のしかも先史時代まで遡るということに驚きました。しかし一方で、歌を唄う人間が二人いれば、そこにポリフォニーが生まれてもおかしくありません。むしろ西洋音楽において12世紀にそれがおこったという事の方が不思議と言えなくもありません。たとえそれが12世紀でなくて、11世紀や10世紀であったとしても。
さて、その譜例の演奏に関してですが、どこで後の人が輪唱として音楽に加わるのか、そこまではこの楽譜からは読み取れません。実際に絡んでみて、やっぱり2小節ごとだよなぁという感覚にしたがっての演奏でした。2曲目のチェレスの音楽に関しては、最初の2小節も繰り返しがあったのではないかということを思うのですが、譜例通り(?)に後半のみを繰り返してみました。3曲目のイタリアのラウダに関しては「変化させながら2回くり返す」という言葉の実践方法が理解できず、結局、自由なアドリブ演奏になってしまったことを書き添えておきます。
13世紀の西洋音楽の譜例が、こんなにも早いところで登場します。「踏みならすメロディと輪唱、下行オクターヴ」というキーワードがこれらの場所も時代も違うこれらの音楽に共通して見られる・・・ということの説明ではないかと思っています。
使用楽器 (A=440Hz)
ソプラニーノ キュング ローズウッド
ソプラノ モーレンハウエル メイプル(キンゼカー)
アルト モーレンハウエル メイプル(キンゼカー)
テナー モーレンハウエル メイプル(キンゼカー)
バス ヤマハ メイプル
グレートバス キュング メイプル
コントラバス キュング メイプル
打楽器 アジアのジャンベ・仏壇のアレ
Papalinの多重録音で、お聴き下さい。m(_ _)m
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この記事へのコメント
>しかし一方で、歌を唄う人間が二人いれば、そこにポリフォニーが生まれてもおかしくありません
まさにそのとおりだと思いました。
以前Papalinさんに刺激されてセイキロスを録音した時に直感的に感じたことは”ハーモニーはカノンから直ちに生まれる”ということでした。
音楽が人と人との間で生まれ楽しまれるものであれば当然自然に”遊び”から単旋律ではない音の重なりが生まれる、そしてふと偶然生まれた音の響きにみんなでニヤリとするのは当然です。ハーモニーが中世ヨーロッパではじめて生まれたというよくある説明のほうがきわめて不自然です。大体、人間ってそんなに生真面目じゃないですよね・・・^^;
でも、そんな突飛な思いつきを実証するような資料はないんだろうなと漠然と思っていましたら、今回このような本を紹介していただいてm(__)m
図書館で検索したらありました。しかもこの本1973年刊、なんですね。
結局「西洋音楽史」という枠組みで考えるから狭くなるんですね。
しかし、いつもながらありがとうございます。
本はあったかもしれないけれど、このようなかたちで音にしてくれる人は世界広しと言えどもPapalinさんしかいないでしょう。しかもそこにある「自由」というのが僕にとっては最大のポイントです。
たこすけさん、ありがとうございます。
始めちゃいました。世の中に音楽が溢れている時代だからでしょうか、ヨーロッパ中世の音楽や、こうした世界の音楽を、とても新鮮に感じています。
> ハーモニーはカノンから直ちに生まれる
仰る通りです。更に加えますと、日本のペンタトニックである陽音階(CDEGAの五音音階)は、半音を含みませんので、輪唱すなわちカノンにしても違和感なく聞こえてしまうということに気づきました。その実例が、宮沢賢治の「星めぐりの歌」でのアプローチです。こうしたことは自然に発生して自然だと思っています。(⇒URL参照)
> 大体、人間ってそんなに生真面目じゃないですよね・・・^^;
はい。その典型がここに1名おります。(^_^;)
譜例が掲載されている本だったら、ピアノが弾ける人だったらピアノで音を出してみるでしょうし、歌える人なら歌うだろうし…。私がこうしてリコーダー(と変な歌)で実際の音にしているのも、これまた自然な流れだと思います。どうせやるなら、自分の感性を信じて"自由に"ということになるのが私の常ですね。(^_^)
《追記》 この本にも「セイキロスの歌」が譜例として登場しますが、冒頭ではなく、追って出てくるというところも気に入りました! (^^♪