◆IL DIVO◆ 21. 歴史的様相と超歴史的様相
≪毎日がコンサートの本番です≫

Die Vier Weltalter Der Musik (Walter Wiora) 21. Historical aspect and super historical aspect
URL : http://papalin.yas.mu/W708/#M021
◇公開日: 2012年12月29日
◇演奏時間: 1分25秒
◇録音年月: 2012年12月
上のアルファベットの曲目名をクリックして、
Papalinの音楽室でお聴き下さい。(視聴・試聴)
20世紀中葉にヴァルター・ヴィオラ氏によって書かれた『世界音楽史 四つの時代』(柿木吾郎訳)の本と共に、掲載された譜例の演奏をして参りましたが、いよいよ譜例の最終節に到達しました。
この本を神田神保町の古本屋で見つけてから、まずざっと目を通し、譜例を演奏してみることに決めました。そして個々の曲(と呼べないようなものもありましたが)を演奏するにあたって、著書の関連箇所を詳しく紐解きながら進めてきました。なぜこんなことをしたのでしょう。
最も大きな理由は、私自身がまだ耳にしたこともないような音楽・音に触れてみたかった、実際にこの耳でそれを確かめたかったということです。そして、こうした人間の歩んできた道のりや歴史が音とともに少しだけではありますが理解できるのではないかという期待もありました。さらに、西洋の著者であるヴィオラ氏が、どのように世界の音楽の歩みを捉えたのかに関しても非常に興味がありました。
いまこうして譜例の演奏を終え、これらの目的が充分とは言えないまでも達成することができたのは喜びです。かけた時間との比較などすべきものではありませんが、私の中では充分元が取れたという印象です。ヴィオラ氏は、これから(20世紀後半以降)の音楽の進む道に警告を鳴らしているわけでもありませんし、今まで通ってきた道が正しかったとか間違っていたというような記述もありません。西洋の音楽が果たした役割については、過大評価することもありませんでした。西洋音楽は確かに大きな役割を果たしてきたことは事実です。言ってみれば"中の人"の一人である著者ですが、色目は感じない、よい本であったと思います。強いて要望を挙げるとするならば、譜例と本文との関係についての記述がもっと欲しかったなという点でしょうか。そういう意味で、私が書いたブログの記事は、この本とは対照的に偏ったものとなってしまったかも知れません。もっともそういうことを最初にお断りし、むしろ敢えてその方向で筆を進めてきたということもあります。いずれにしましても、こうした内容に興味を持たれる方がいらっしゃいましたら、この50年前の本を読まれることをお薦めします。
さて、最終節である第21節の譜例のタイトルは、「歴史的様相と超歴史的様相」でした。
最後(の譜例)に西洋音楽の最も美しい出発点ともいうべき、神を賛美する音楽に戻ってきたのは、従順な読者である私としてはホッとしました。もちろん著書の中では現代の音楽と音楽を取り巻く技術や環境に関して様々な考察がされていますけれど、音としての最後がこの2曲で良かったなと素直に感じています。私は充分に非前衛(後衛?)です、まったく否定しません。
ベートーヴェンに限らす、弦楽四重奏を聴く楽しみを、中学生だったころから老後の愉しみの一つと決めていた私にとっては、もっとも疎いクラシック音楽のジャンルです。ですのでこのベートーヴェンの曲も知りませんでした。あるときから、ベートーヴェンのadagio指定の曲は、思いっきりゆったりと演奏してやろうという意図が私の中に芽生えました。ですので、今回も相当ゆっくりと演奏してみたつもりなのですが、それがちっとも遅すぎないと感じています。少し前の「和音連結」の節で、西洋音楽の和音進行のルールのようなものの譜例を演奏しました。あのベートーヴェンが腸の病から快復したあとに、神に感謝するように音や和音の運びを先人の音楽から学んだものを土台に作曲したのででしょう。「病癒えたものの神に対する聖なる感謝の歌」とは、ベートーヴェン自身の言葉です。ときは折しも年末ですが、年末恒例の『第九』の有名なテーマがこの本のこの箇所に掲載されるよりも、はるかに印象的でした。感謝です。
この曲について、ちょっとだけ補足しますと、譜例にあるように、この曲(第3楽章)は調性記号が何もありませんので、ハ長調の曲となるのですが、和声進行の点から見るとヘ長調なのです。でも、ヘ長調だとシ(H)にフラットが付きます。敢えてそうせず、シはナチュラルのまま使っていますので、これは、ピアノの白鍵で弾くファソラシドレミファの「リディア旋法」の曲となります。
一方のバルトーク。こちらも聖なる響きを感じ取ることができます。この曲の作曲当時、バルトークは白血病の末期段階を迎えていたのですね。この曲は、自分の健康状態に不安を抱いていたバルトークが、他の委嘱作品の作曲を断ってまでして、彼の奥さんだったピアニストのディッタ夫人のために作曲した曲です。初演は1946年に彼の弟子によって行われ、ディッタ夫人は、この著書が出版されていこうと思われる1960年代になってから初めて演奏録音したようです。その後も何回か録音はされているようですが、コンサートでは一回も弾かなかったそうです。
しかしいろんな人やものを一つの型に押し込めてしまうのはどうかと思いますが、私がこれまで耳にしていたバルトークの代表的な音楽からは想像がつかないような神聖な響きがします。しかも、バルトークっぽさも含まれています。正に温故知新の例とも言えましょう。
この2つの曲、機会があったら、全曲演奏してみたいと思っています。だって、譜例の最後の和音の音は、トニカ(終止)ではなくて、ドミナント(未解決)で終わっていますものね。
楽器はあくまでリコーダー・アンサンブルにこだわります。
なぜなら、それが私の音楽表現の術だからです。(#^.^#)
長らくのお付き合い、ありがとうございました。 m(_ _)m
曲目
1. 弦楽四重奏曲 Op.132 molto adagio (ベートーヴェン)
【病癒えたものの神に対する聖なる感謝の歌,リディア旋法】
String quartet Op.132 molto adagio (L.van Beethoven)
2. ピアノ協奏曲 第3番 adagio religioso (バルトーク)
Piano Concerto No.3 adagio religioso (Bartók Béla Viktor János)
使用楽器 (A=440Hz)
テナー 全音 チェリー
グレートバス キュング メイプル
Papalinの多重録音で、お聴き下さい。m(_ _)m
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