◆IL DIVO◆ 8: 『楽譜の歴史』 古代と中世の楽譜 【中世世俗歌曲譜】
≪毎日がコンサート本番!≫
Music Gallery 1.Music Score in ancient times and the Middle Ages - 8.Secular Songs in neumes
URL : http://papalin.yas.mu/W708/#M108
◇公開日: 2013年10月05日
◇演奏時間: 2分24秒
◇録音年月: 2013年10月
上のアルファベットの曲目名をクリックして、
Papalinの音楽室でお聴き下さい。
著書は楽譜の歴史について書かれたものですが、ヨーロッパ中世の代表的な世俗曲のジャンル(ゴリヤード歌曲、トゥルヴェール歌曲、ミンネゼンガー歌曲)も網羅している辺りが皆川達夫さんの素晴らしいところです。世俗曲が楽譜として登場するのは時代的には遅く、またそれらは厳粛な教会で大事に保管された宗教曲とは違って後世まで残っていること自体が珍しいと思えるジャンルです。ですので、これらの楽譜はある意味では宗教曲よりも貴重な楽譜と言えるかも知れませんね。
【14.ゴリヤード歌曲(カルミナ・ブラーナ)】
11世紀から13世紀にかけて、ヨーロッパにはゴリヤードと呼ばれた放浪の学生ないし下級聖職者が横行していました。それらのゴリヤード歌曲のいくつかは、<カルミナ・ブラーナ>の名で知られた曲集に収められています。写真の歌の旋律は譜線なしネウマで記されていますが、他の資料との校合によって解読できるものも一部にはあります。その実例として、"D"の飾り文字ぶはじまる歌曲の解読譜が添えられています(ミュンヘン バイエルン国立図書館所蔵)。
Wikipediaから引用します。ゴリアール(ゴリアード、ゴリヤード、ゴリャード、Goliards)は、12世紀と13世紀に酒好きのラテン語風刺詩を書いた聖職者の集団のこと。ゴリアールは主としてフランス、ドイツ、イタリア、イングランドの大学の聖職者の遍歴学生で、たとえば十字軍の失敗、財政上の悪用といった教会内でふくれあがる矛盾に反抗し、それを歌、詩、パフォーマンスで表現した。
なるほど、ゴリアードたちは、のちの宗教改革と同じようなプロテストの運動家だったのですね。カルミナ・ブラーナ(Carmina Burana)は19世紀初めにドイツ南部のバイエルン州にあるベネディクト会のボイレン修道院(ベネディクトボイエルン: Benediktbeuern)で発見された詩歌集です。1803年、ボイレン修道院が国有化されることになり、調査が行われました。その際に、図書室から古い歌を集めた写本が発見されました。その中の歌は約300編にのぼり、ラテン語、古イタリア語、中高ドイツ語、古フランス語などで書かれていました。歌詞の内容は若者の怒りや恋愛の歌、酒や性、パロディなどの世俗的なものが多く、おそらくこの修道院を訪れた学生や修道僧たちによるものと考えられています。中にはネウマによって簡単な旋律が付けられているものも10曲(9つの歌及び『賭事士たちのミサ曲』という曲)あります。これらの写本は11世紀から13世紀の間に書かれたと推測され、『カルミナ・ブラーナ』(ボイレンの歌)という題名で編纂され、1847年に出版されました。現在、写本はミュンヘンのバイエルン州立図書館に所蔵されていいます。30年ほど前に亡くなったカール・オルフ(1895-1982)がこれに基づいて作曲した同名の世俗カンタータは有名です。
どんな歌詞がついているのか調べていませんので、無難にソプラノ・リコーダーで演奏しました。
【15.トゥルヴェール歌曲(モニヨ・ダラス作曲 そは5月)】
北フランスのトゥルヴェール歌曲の楽譜です。グレゴリオ聖歌と同じように、4線つき四角形ネウマで記譜されています。右欄の曲は、モニヨ・ダラス(c1190-after1239)が作曲した<そは5月>という歌です。モニヨの名前は、右端の円の中に記されています。リズムの表示はありませんが、歌詞の韻律にしたがって、長-短リズムによる解読が可能になりました(パリ アズナル図書館所蔵)。
ひょっとしたらと思い、インターネットで探してみましたら、全曲の解読譜を見つけることができました。Wikipediaのこの曲(Ce fut en mai)のページに楽譜が掲載されていましたので、それを用いて歌ってみました。譜面を見ますと、元気の良い曲の感じがします。歌詞は古いフランス語で書かれていて、内容は凡そですが、ある男性が、騎士と少女が庭ではね回っているのをどのように見ているかを述べ、彼は彼らの後をつけ、彼らに自分が片思いであることを告白します。彼らは彼を慰めますが、彼は泣いて神にゆだねます・・・とこんな感じです。私の歌ではフランス語には聞こえないと思いますが、古フランス語の歌です。(^_^;)
【16.ミンネゼンガー歌曲(フラウオエンロープ作曲 マリア賛歌)】
これはドイツのミンネゼンガー歌曲の実例です。フラウエンロープの別名で知られたハインリヒ・フォン・マイセン(?-1318)作曲のマリア賛歌が、5線つきゴチック・ネウマで記譜されています。そのリズムは、モドゥス・リズム法による3拍子系のものと、4拍子系のものと、2通りの解釈が可能です。1470年ごろ筆写されたコルマール歌曲本に収められています(ミュンヘン バイエルン国立図書館所蔵)。
2通りの解釈による譜例が掲載されていましたので、両方を歌ってみました。当時はどちらで歌っていたのか知りたいとも思うのですが、一方では謎のままの方がロマンティックだと思ってみたりします。ものごと全てを知ってしまうことには、功罪ありますね。
単旋律を歌ったあとで、ちょっと物足りなさを感じたので、後からギター伴奏を加えてみました。ビートルズやサイモン&ガーファンクルのプロデューサーのようなことをしてしまいました。音程が悪くて恥ずかしいのですが、録り直しをしないのが私の悪い癖です。
楽譜は、音楽之友社のISBN4-276-38008-1 C0073を使用しました。
使用楽器
ソプラニーノ キュング ローズウッド
ソプラノ モーレンハウエル グラナディラ
ソプラノ フェール パリサンダー
アルト メック オリーヴ
テナー メック ボックスウッド
テナー 全音 チェリー
バス ヤマハ メイプル
グレートバス キュング メイプル
コントラバス キュング メイプル
チェンバロ ギタルラ社 フレミッシュ・タイプ
ギター クラシック・ギター
打楽器 大小ジャンベ、鐘等
Papalinの多重録音で、お聴き下さい。m(_ _)m
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