◆IL DIVO◆ 10: 『楽譜の歴史』 定量譜 【ノートル・ダム楽曲譜】

≪毎日がコンサート本番!≫

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Music Gallery 2.Mensural notation - 2.Notre Dame school
URL : http://papalin.yas.mu/W708/#M112

 
  ◇公開日: 2013年10月09日
  ◇演奏時間: 59秒
  ◇録音年月: 2013年10月
    上のアルファベットの曲目名をクリックして、
    Papalinの音楽室でお聴き下さい。




音楽の世界に"楽派"という言葉が登場します。バロック以降も、ウィーン古典派とかロシアの国民楽派など、ある特徴を共通に持つ作曲家たちをこうして括って表現しますが、ノートル・ダム楽派に関しては、英語でNotre Dame Schoolと表記されるように、1200年前後にパリのノートルダム大聖堂で活動した作曲家たちが競って一緒に音楽を学んでいた姿が伺えます。ノートル・ダム楽派は、音楽における音の長さの表現に関する課題を克服する手段として、モドゥス・リズムと呼ばれるリズム体系を使ったモーダル記譜法という表示法を使いました。これも音楽の歴史の進歩です。


【20.2声のオルガヌム】

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ノートル・ダム楽派(13世紀)の2声オルガヌムです。上声部(ドゥプルム)と下声部(テノール)とが上下に並べて記譜されています。音高に関しては問題ありません。テノールが長く持続されている部分のリズム解読には多くの問題が生じますが、テノールの動きの細かい部分は、単独符と連結符(リガトゥラ)の並び方によって、解読は比較的容易です。右の写真の日田から2段目(下から3行目と4行目)の"do"の部分の解読譜が添えられています(フィレンツェ メディチェア=ラウレンツィアナ図書館所蔵)。

この曲は、ノートル・ダム楽派が考えたの一つで、第1モドゥスと呼ばれるリズム・パターン(タンタタンタというリズム)で始まります。中世の宗教的な音楽は3拍子が基本です。父と子と聖霊を表しているようで、3拍子の音楽が完全なものとされていました。モドゥスは一見8分の6拍子に見えますが、3拍子が2つ連結したものとも考えられます。

ドゥプルムとは、ドゥ+プルムで、第2声部を指します。この譜例の歌は2声なので、グレゴリウス聖歌の断片から採られた元となるテノール・パートに、シラビックな動きをする旋律に別の歌詞を乗せて歌われた第2のパートのことです。13世紀にはすでに、3声の第3声部(triplum)、4声の第4声部(quadruplum)をもつ歌も登場しています。プルムのパートは、世俗的な歌詞が使われることも多かったようです。

リガトゥラとは、もともと複数の文字を連結したもの(合字)を指します。ラテン語ではaとeがくっついた文字やoとeがくっついた文字を目にしますね。音楽でも同様で、連結した音符、つまり連結符のことを指します。

譜例は現代風に小節数で言いますとたったの4小節分なので、中途半端な演奏ですみません。



【21.2声のクラウズラ】

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13世紀ノートル・ダム楽派の2声クラウズラが記譜されています。ふたつの声部が2段に並べられ、それぞれが単独符と連結符(リガトゥラ)との結合の仕方によってリズムのパターン(モドゥス)を表示しています。例えば1行目のクラウズラ<レニャト>は第3モドゥスで動くことを示しています。その部分の解読譜が掲載されています(フィレンツェ メディチェア=ラウレンツィアナ図書館所蔵)。

モドゥスという、いわば演奏する上でのルールが決まって楽譜に表記されたとは言え、この写真のような楽譜を見て初見で演奏するのは至難の業のように思います。やはり何度か練習して、他の声部の歌い手と合わせていったのでしょうね。現代の楽譜のようにゆったりと書かれたものではなくて、こまごまと間隔を詰めて書かれているのも、読みにくい一因ですが、当時は紙は非常に貴重なものであったことを考えますと、納得するところです。

クラウズラについてちゃんと説明しようとすると長くなりますので、簡単に書きますと、グレゴリオ聖歌のメリスマ的な部分( 歌詞の1音節を異なるいくつもの音符で歌う部分)を、膨大に引き延ばして(速度を大幅に落として)定旋律とし、その上に速い動きの声部を乗せて作られたオルガヌム(多声楽曲)のことです。

こちらも譜例はたったの4小節分なので、中途半端な演奏で申し訳ないです。




【22.3声のオルガヌム (ペロティヌス作曲 アレルヤ)】

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13世紀初頭にペロティヌス(ペロタン)が作曲した3声のオルガヌム<アレルヤ>の冒頭部分です。テノール(3、6、9行目)が聖歌の旋律を長く長く持続させていくのに対して、ふたつの上声部は単独符と連結符(リガトゥラ)との組合せにしたがって、第3モドゥスの動きを示しています(ヴォルフェンビュッテル アウグスト公図書館所蔵)。

中世の音楽では非常に有名な音楽家による作品です。私もペロティヌスの曲は何曲か演奏していますが、どれもみな「これはペロタンの曲だよね!」と分かる特徴があります。それは、ノートル・ダム楽派が用いたモドゥスを使った音楽であるということなのですが、その代表者としてペロティヌスが存在していたということでしょう。殆ど動きのないテノールの定旋律に対して、非常に細かく動き回る上声部が、音楽に多大な躍動感をもたらせているように感じます。一度聴いたら、メロディまでは覚えられなくても、印象に残って頭の中を駆け巡りそうな音楽です。

このペロティヌスの多声音楽の楽譜ですが、スコアのように、各声部が並べて書かれていることを頭の隅にちょっと置いておいて下さい。

譜例は9小節分でしたが、他の楽譜を見つけましたので、少しだけ長く演奏しました。




楽譜は、音楽之友社のISBN4-276-38008-1 C0073を使用しました。



使用楽器

   ソプラニーノ      キュング         ローズウッド
   ソプラノ         モーレンハウエル   キンゼカー(メイプル)
   ソプラノ         モーレンハウエル   グラナディラ
   ソプラノ         フェール         パリサンダー
   アルト          モーレンハウエル   キンゼカー(メイプル)

   アルト          メック           オリーヴ
   テナー          モーレンハウエル   キンゼカー(メイプル)
   テナー          メック           ボックスウッド

   テナー          全音            チェリー
   バス           ヤマハ          メイプル
   グレートバス      キュング         メイプル
   コントラバス       キュング         メイプル

   チェンバロ       ギタルラ社        フレミッシュ・タイプ
   ギター          クラシック・ギター
   打楽器         大小ジャンベ、鐘等




Papalinの多重録音で、お聴き下さい。m(_ _)m



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