◆IL DIVO◆ 1: 『楽譜の歴史』 古代と中世の楽譜 【古代ギリシアの楽譜】

≪毎日がコンサート本番!≫

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Music Gallery 1.Music Score in ancient times and the Middle Ages - 1.Ancient Greece
URL : http://papalin.yas.mu/W708/#M101

 
  ◇公開日: 2013年10月05日
  ◇演奏時間: 8分
  ◇録音年月: 2013年10月
    上のアルファベットの曲目名をクリックして、
    Papalinの音楽室でお聴き下さい。




著書の最初に登場するのが、この古代ギリシアの楽譜です。2曲目に演奏したセイキロスの墓碑銘に刻まれた楽譜の演奏はすでに行っていますが、1曲目のアポロン賛歌は初めてお目にかかりました。何とも魅力的で興味をそそられます。あれこれ妄想せずにはいられません。

古代ギリシアの楽譜は、その体系化された音楽理論と結びついて、すでに一つの完成した世界をつくりあげていました。つまり、ローマでは退行してしまったかのように思えた音の高さや音の長さを、文字や記号で表示する方法を体系化していたのです。このことだけでも非常に興味深いのですが、そうした楽譜から生まれる音楽の新鮮なこと。そう思うのはきっと私だけではありますまい。





【1.アポロンへの賛歌】
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古代ギリシアのほぼ中心部、パルナッスス山麓のデルフォイは、アポロン神殿の地として、全ギリシアの信仰を集めていました。その宝物庫の石壁に、アポロンへの賛歌が楽譜付きで刻み込まれています。ギリシア語歌詞のうえに音高をしめす文字がそえられた楽譜で、紀元前2世紀中ごろ(一つはB.C.138年、もう一つはB.C.128年の記述があるようです)のものです。右の写真の比較的読みやすい下から5行目の部分の解読譜を皆川さんが添えてくれました。(デルフォイ,考古学博物館蔵)

現在発見されている古代ギリシアの文字譜は、10種類くらいですが、皆川さんの解読譜は、その中の第2アポロン賛歌と呼ばれるものの一部です。インターネットで調べてみましたら、第1アポロン賛歌の解読譜が見つかりました。そこで、第2の方は部分的ではありますが、2つのアポロン賛歌を演奏してみました。古代ギリシア人は雄大で真っ青な空のもとで歌ったのでしょうか、それとも神殿の中で厳かに歌ったのでしょうか、妄想は尽きません。

この歌を歌って演奏して聴いてみますと、そこにはローマの旋法とは全く異なる半音階進行が見られます。それは中近東的でもあり、また日本的でもあります。何故かその旋律には愛着があります。

中世ヨーロッパ(ギリシアではなく、ローマ時代以降)の音階というか、正しくは旋法ですけれど、それらにはドリア旋法、フリギア旋法、リディア旋法、ミクソリディア旋法といった古代ギリシア由来の名称がついています。しかし、この曲を演奏してみて、これらローマの旋法が、ギリシアの理論家たちによってうちたてられた旋法とは何の関係ももっていないことがお分かりいただけるでしょう。古代ギリシアのこの歌には、クロマティック(半音階)な進行もあれば、意図的にメロディの進行において半音下げた音を選んだ箇所もあります。それらはキリスト教音楽の旋法には全く登場しないものです。初期キリスト教の著述者たちが誤った理解のもとに、これらの用語を使ったのでした。その後、キリスト教会では各々の旋法をこうした名称を用いず、上にあげた例でいえば、順に第1旋法、第3旋法、第5旋法、第7旋法と呼ぶようになりました。

私なりのひらめきで演奏しています。言うまでもありませんけれど。





【2.セイキロスの墓碑銘の歌】
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小アジアのトラレスで発見された碑文に刻まれた楽譜です。セイキロスがその妻の死を悼んだ歌を、楽譜付きで刻んでいます。右の写真の上から6行目からはじまる詞がそれで、音高を示す文字、さらにリズムやアクセントをしめす記号が添えられています。年代は紀元前2世紀から1世紀のものとされています。

この曲は以前にも演奏しました。興に乗って勢いで勝手なアレンジをしたものも演奏しました。今回は、上のアポロンへの賛歌とともに、どのように歌われ奏されたのかをちょっと考えての演奏です。といっても、当時の演奏を再現するすべはなく、これも私の想像での表現です。

11月のコンサートのために、つい最近我が家にやってきたフレミッシュ・タイプのチェンバロも演奏に加わってもらいました。何ともエキゾチックな響きになり、リコーダーもリコーダーではないような気さえします。





楽譜は、音楽之友社のISBN4-276-38008-1 C0073を使用しました。


使用楽器

   ソプラニーノ      キュング         ローズウッド
   ソプラノ         モーレンハウエル   グラナディラ
   アルト          メック           オリーヴ
   テナー          メック           ボックスウッド

   テナー          全音            チェリー
   バス           ヤマハ          メイプル
   グレートバス      キュング         メイプル
   コントラバス       キュング         メイプル


   チェンバロ       ギタルラ社        フレミッシュ・タイプ
   打楽器         大小ジャンベ、鐘等




Papalinの多重録音で、お聴き下さい。m(_ _)m



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この記事へのコメント

ichi
2013年10月08日 10:37
古代の音楽は、秋の爽やかな空気にとても合います。
さて、去年から今年にかけて、増加傾向にあった体重を5kgほど絞って、万全の体制で臨んだ健康診断ですが、ひっかかりました。以前このブログでPapalinさんがお茶目に報告していたような検査をボクも受けなければなりません。Papalinさんの人生をなぞっているようです。
Papalin
2013年10月09日 08:36
◆◆ お茶目に報告していたような検査をボクも受けなければ

ichiさん、ありがとうございます。
5kg絞ったのですか。そういえば先日、東京でお会いしたときに、幾分精悍さを取り戻したかなと感じました。それを話題に持ち上げなかったのは、私の自衛本能によるものです。

そうですか、精密検査ですね。まぁ一度やってみましょう。人生、生き方の幅も広がります。白であっても黒であっても何であっても、早期発見に勝るものはありません…と自分に言い聞かせて臨みました。

すると、この検査が終わったら次は、急性虫垂炎に至ります。(^_^;)
ichi
2013年10月18日 12:30
急性虫垂炎・・・

そんなこともありましたっけ。盲腸は20年くらい前に無くしています。
音楽のページが時系列、地域別に分類されてとても使いやすいですね。さらに薀蓄も充実してきたので、音楽の小部屋ではなくて、もう立派なライブラリーです。
Papalin
2013年10月18日 13:14
◆◆ 盲腸は20年くらい前に…

ichiさん、ありがとうございます。
そうでしたか。それは安心(?)ですね。私は昨年の6月に罹って、腹腔鏡を使って除去してもらいました。全身麻酔でした。帰って来れてよかったです。

> ページが時系列、地域別に分類されてとても使いやすい

ありがとうございます。もう、こうでもしないと収拾がつかなくなってしまいました。段々と分類していこうと思っていますが、なかなか時間が取れなくています。でも、探しやすくなりましたね。

> 薀蓄も充実してきたので…

著書の記述を丸写しではつまらないので、私の考えとか、気付いたことを中心に書こうと思っています。そうすると、調べものとかに結構時間がかかります。ですので最近は放ったらかしで、書かなければいけないブログが、すでに2桁はスタックされていることでしょう。(^_^;)

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