◆IL DIVO◆ 5: 『楽譜の歴史』 古代と中世の楽譜 【5線ネウマ譜】

≪毎日がコンサート本番!≫

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Music Gallery 1.Music Score in ancient times and the Middle Ages - 5.Five lines staff neumes
URL : http://papalin.yas.mu/W708/#M105

 
  ◇公開日: 2013年10月05日
  ◇演奏時間: 1分15秒
  ◇録音年月: 2013年10月
    上のアルファベットの曲目名をクリックして、
    Papalinの音楽室でお聴き下さい。




いよいよ私たちに馴染みのある五線紙の登場? いやいや、それはまだ早い話です。


【10.クリスマスの聖歌】

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13世紀になると、ネウマ譜は地域固有の形をすてて一様に四角形になり、4本の譜線を添えるのが普通となりました。これは13世紀のスペインで筆写された5本の譜線の実例で、クリスマスのためのミサ聖歌を収めています(ニューヨーク スペイン協会所蔵)。Pの飾り文字の細密画が美しいですね。

ネウマ譜に添えられる譜線の数ですが、4線がいいのか、5線がいいのか、またはもっと多い方が、少ない方がいいのか・・・それらのことは当然先人たちは考えたことでしょう。以下は私の考えですとお断りした上で書きます。ヨーロッパの古代中世の音楽は教会旋法を、それもかなり厳密に使用した音楽です。奏でるのは声楽、つまり人の声でした。人の声と言っても、時代を経たベルカント唱法でのオペラのアリアのように、音域の広い歌い方ではなく、ごく自然に発声して歌っていたものと思います。ですから音域は1オクターブ+1音でこと足りていました。これを、8つあった教会旋法全てに当てはめると、最低音は第2旋法のト音で、最高音は第7旋法のト音、この間ちょうど2オクターブあります。一人で歌う声域としては広いですが、テナーの声、バリトンの声、バスの声、それぞれの人が歌ったと考えると、”男声"全体の声域としては妥当な音域です。

ここでいきなり脱線しますが、日本の唱歌や抒情曲は、この1オクターブ+1音という音域で作曲されたものが数多くあります。その程度の音域が、声楽を専門に学んだ人以外の一般の人が歌うのに適した音域なのですね。こんなところに、教会旋法との関係が見出せるとは思ってもいませんでした。そのことから考えますと、東日本大震災の復興ソングである「花は咲く」という歌は、音域が2オクターブ近くある"難しい歌"なのです。こうした目的を持った歌は、誰もが歌える、誰もが歌いやすいように作曲されるのが常套手段だと思うのですが、あえてそれをしなかったところに、作曲者の何かしらの意図を感じます。

話を元に戻しましょう。教会旋法の8つの旋法全てを考えますと、音域(声域)はちょうど2オクターブという話をしましたが、それぞれの曲は、8つの中のどれかを使用するのであり、音域は1オクターブ+1音でこと足ります。では、その音域を譜線の範囲内に収めてみようと考えます。現代の譜面にあるような加線(五線の範囲外の音に用いる一時的な線)は使用しません。だって見にくいですし、歌いにくいですし、段落の間は広く取らないといけませんしね。そうしますと、4線あればこと足りることがわかります。でも5線あると、複数の旋法でそのまま使えてちょっと便利かなと思いますよね。

さて、各々の歌は、4線もしくは5線の譜線でこと足りますが、8つあった教会旋法のすべてをこの4線ないし5線で表現することはできるのでしょうか。そこで考えたのが、ハ音やヘ音を表示する位置(線)を変えれば、ほぼ平行移動で譜線の中に収まるということです。現代人である私たちは、ピアノの楽譜のような大譜表と呼ばれるト音記号とヘ音記号で書かれた一対の楽譜に慣れすぎていて、各音部記号の第何線の音は何、というような一対一の関係で音を覚えてしまいますが、ヨーロッパ中世の時代はヘ音記号のへ音の位置や、ハ音記号のハ音の位置を変えて表現するというのが理にかなった記譜の方法だったことが理解戴けましたでしょうか。(ガッテン、ガッテン!)

ちなみに、バッハの自筆楽譜を見ますと、バッハの時代にもその記譜法は厳然と受け継がれていて、ヘ音記号、ハ音記号に加えて、ト音記号もこうしてずらして表記していることがわかります。現代ではト音記号は第2線がト音というのが普通ですが、バッハの楽譜には、第1線がト音という、いわゆるフレンチ・ヴァイオリン記号も普通のものとして使われています(ブランデンブルク協奏曲のリコーダー・パートも、この表記です)。上に書いた理由とは全くことなりますが、後のルネサンス初期に、楽譜も印刷されるようになりましたが、印刷する技術が未発達であった頃は、加線をなるべく用いずに記譜できるように各種音部記号が活用されたということもありましたので、付け加えておきます。


さてさて、能書きが多くなりましたが、この楽譜なら、解読譜がなくても私でも最後まで演奏できます。音の長さに関する情報はないので、フレーズの最後の音をやや長めにして溜めを作って演奏すると、こんな感じになるでしょうか。

そうそう、この写真の楽譜ですが、各段の終わりの音のさらに右側に、黒い符頭と白い棒または8分音符の符尾のような形をしたマークが描かれていますよね。実はこれ、次の段の最初の音の高さを示しています。現代の楽譜ではこんなもの見ませんよね。実はそれには大きな意味があったということが今回演奏をしたことによってよくわかりました。後のブログにてお話しましょう。




楽譜は、音楽之友社のISBN4-276-38008-1 C0073を使用しました。



使用楽器

   ソプラニーノ      キュング         ローズウッド
   ソプラノ         モーレンハウエル   グラナディラ
   アルト          メック           オリーヴ
   テナー          メック           ボックスウッド

   テナー          全音            チェリー
   バス           ヤマハ          メイプル
   グレートバス      キュング         メイプル
   コントラバス       キュング         メイプル

   チェンバロ       ギタルラ社        フレミッシュ・タイプ
   打楽器         大小ジャンベ、鐘等




Papalinの独奏で、お聴き下さい。m(_ _)m



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