◆IL DIVO◆ 五線譜でたどる音楽の歴史 F: ポリフォニーの起源

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Music History in Examples. From Antiquity to Johann Sebastian Bach (Otto Hamburg) / Origin of Polyphony
URL : http://papalin.yas.mu/W711/#M006

  ◇公開日: 2014年3月15日
  ◇演奏時間: 5分13秒
  ◇録音年月: 2014年3月
    上のアルファベットの曲目名をクリックして、
    Papalinの音楽室でお聴き下さい。




オットー・ハンブルク(Otto Hamburg)著による『五線譜でたどる音楽の歴史(Music History in Examples. From Antiquity to Johann Sebastian Bach)』に掲載された楽譜を用いて演奏しています。

【F: ポリフォニーの起源】

12. 平行オルガヌム
   Parallel Organum

  12-1. 平行オルガヌム:「生きている私どもは」
     Parallel Organum "Nos qui vivimus"

  12-2. 平行オルガヌム:「主に栄光がありますように」
     Parallel Organum "Sit gloria Domini"

  12-2. 平行オルガヌム:「主に栄光がありますように」
     Parallel Organum "Sit gloria Domini"


オルガヌム(organum)というのは、800年頃から1200年頃までの様々な様式のポリフォニーを総称する言葉である。古い初期のものでは、グレゴリウス聖歌の旋律すなわち主旋律(vox principalis)の下に4度または5度の間隔で並進行する別の旋律つまりオルガヌム旋律(vox organum)が付いている。この2つの旋律は、オクターヴ上か下で重ねられる場合も多かった(「生きている私どもは」(Nos qui vivimus)と「主に栄光がありますように」(Sit gloria Domini)の部分参照)、いわゆる「ディアフォーニア・カンティレーナ」(diaphoniacantilena)になると、やや自由な形になっている。と言うのは、初め両声部は同音で始まるけれども、上声が4度の間隔に達するまで上行し、4度音程になると両声部は並進行する。そして最後にまた同音に戻るのである。グィード(Guido d'Arezzo)はこのことを「オックルスス」(occursus)と言っている。その際、3つの全音からなる音程すなわちトリトヌス(tritonus)は回避された。

4度と5度の間隔で鳴り響く「生きている私どもは」は、まさに中世の響きがします。3度や6度は純正なハーモニーではないとした中世の音楽人たちの気骨が感じられます。私はこれは歌いたいと思いました。楽譜通りの音だと私には低すぎる(最低音はD)ので、少し上げてみました。「天の王」は、以前リコーダーで演奏しました。



13. 自由オルガヌム:「全能の創造主」
   Free Organum "Cunctipotens genitor Deus"


自由オルガヌムになると、譜例12に見られる並進行と斜進行に加えて反進行が生じている。主旋律(譜例3と4のキリエ・トロープス「全能の創造主」)は、今度は下声になっているけれども、かだ次例のメリスマ様式のオルガヌムの場合のようには、はっきりオルガヌム旋律と対照的になっていない。

2声の曲で、3節から構成されていますが、その第3節に一か所だけ長3度が登場するところに興味があります。その他のところは1度(同度)・4度・5度・8度(オクターブ)・11度(オクターブと4度)に厳格に保たれているのです。



14. メリスマ様式のオルガヌム:「全能の創造主」
   Melismatic Organum "Cunctipotens genitor Deus"


この様式のオルガヌムは、12世紀以降に普及した。この場合、主旋律は定旋律(cantus firmus)となって、下声部で各音を引き延ばして歌われ、一方オルガヌム旋律が、この引き伸ばされた各音の上でメリスマ風に遊動する。発見された写本の現状からすると、メリスマ様式のオルガヌムは、ことにフランスのリモージュにあるサン・マルシャル修道院とスペインのサンティアーゴ・デ・コンポステーラ修道院で育まれたものと考えられる。

引き伸ばされた定旋律を元に考えた場合、そこに乗るオルガヌム旋律は、ときとして2度や3度や6度になっても、むしろそれが自然な運びだと思います。宗教的響きに満ちた曲だと感じました。



15. 聖マーニュス賛歌:「気高くて謙虚で」(双子の歌)
   St.Magnus Hymnus "Nobilis humilis" (Gymel)


3度と6度の音程は、ヨーロッパ大陸では不完全協和音程と不協和音程(concordatia imperfecta/discordantia)(フランコ/がるランディà(Franco/Garlandia))、つまり調和しないとみなされていたのに対して、イギリス諸島とスカンディナヴィア地方では、すでに13世紀頃から協和音として通用していた。聖マーニュスを讃える賛歌に見られる3度の連続並進行が、この事実を例証している。聖マーニュスはオークニー諸島の守護聖人であり、この賛歌もそこから出たものである。このような合唱法はジメル(gymel,双子)またはカントゥス・ジェメッルス(cantus gemellus,双子の歌)と言われていた。

この曲集の冒頭部分で最も感動したのがこの曲でした。見事なまでの3度の連続並進行の曲です。もしこの教kの旋律だけが与えられて、もう一つ声部を加えよと言われたら、こう書くのではないかと思うようなお手本ともいえるポリフォニーです。



楽譜は、アカデミア・ミュージックから1982年に徳永隆男・戸口幸策による共訳で1982年に出版された
五線譜でたどる音楽の歴史』を使いました。



使用楽器

   ソプラノ         モーレンハウエル   キンゼカー
   アルト          モーレンハウエル   キンゼカー
   テナー          モーレンハウエル    キンゼカー
   バス           モーレンハウエル   キンゼカー
   バス           ヤマハ          メイプル
   グレートバス      キュング         メイプル
   コントラバス       キュング         メイプル



Papalinの多重録音で、お聴き下さい。m(_ _)m


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