◆IL DIVO◆ 五線譜でたどる音楽の歴史 I: 15世紀のイギリス楽派
≪毎日がコンサート本番!≫

Music History in Examples. From Antiquity to Johann Sebastian Bach (Otto Hamburg) / English School (15c.)
URL : http://papalin.yas.mu/W711/#M009
◇公開日: 2014年3月17日
◇演奏時間: 6分15秒
◇録音年月: 2014年3月
上のアルファベットの曲目名をクリックして、
Papalinの音楽室でお聴き下さい。
オットー・ハンブルク(Otto Hamburg)著による『五線譜でたどる音楽の歴史(Music History in Examples. From Antiquity to Johann Sebastian Bach)』に掲載された楽譜を用いて演奏しています。
【I: 15世紀のイギリス楽派】
28. モテット「聖なるマリア様」 / ジョン・ダンスタブル
Motet "Sancta Maria" / John Dunstable (c1380-1453)
「イギリス楽派」はアルス・ノーヴァとネーデルランド楽派(譜例31以降)をつなぐ重要な掛橋となった。そのもっとも重要な作曲家がダンスタブルである。彼は、イギリス音楽の習慣上の諸特質---3度音程、3和音、それに6の和音を好んで使用すること---をすべて把握した上で、大陸の伝統様式を取り入れ、イギリス音楽の諸特質と融合させたのである。ここに取り上げたモテットでは、もはや譜例19や22に見られるような多歌詞性も既存旋律をテノールとして使用することも見られない。彼は宗教的なラテン語歌詞を好んで用いた。慎重に配慮された掛留音は別として、不協和音は回避され、4度音程の箇所には、よく変化記号が付いている。中世とルネサンスの間の境界線がこのイギリス楽派のところで弾かれるのも当然である。
著書にも書かれていますが、中世の音楽とルネサンス音楽との違いが、これほど歴然とわかるのはダンスタブルに代表されるイギリス楽派の業績によるものです。現代までを通して、イギリスの音楽は大陸の音楽よりも低く見られがちなところがありますが、私はダンスタブルはヨーロッパ音楽の歴史において、かなり重要な役割を果した作曲家として尊敬しています。彼が既に当時のイギリスの音楽を耳にしていて、それらを体系化したのであったとしてもです。そういう意味では、大バッハも同じような立ち位置にいますね。とは言いながら、ダンスタブルのこの作品、中世の音楽の一つの特徴だったランディーニ終止をしつこいまでに用いていて面白いですね。
29. ミサ曲「贖い主の恵み深い御母」より サンクトゥスとアーニュス・デイ
Missa super "Alma Redemptoris Mater" Sanctus, Agnus Dei
29-1. グレゴリウス聖歌 交唱「贖い主の恵み深い御母」 ≪引用≫
Gregorian chant, Antiphon "Alma Redemptoris Mater"
29-2. ミサ曲「贖い主の恵み深い御母」より サンクトゥス / リオネル・パワー
Missa super "Alma Redemptoris Mater" Sanctus / Lionel Power (?-1445)
29-3. ミサ曲「贖い主の恵み深い御母」より アニュス・デイ(1) / リオネル・パワー
Missa super "Alma Redemptoris Mater" Agnus Dei I / Lionel Power (?-1445)
このミサ曲は、ダンスタブルと同時代のイギリス人パワーの後期の作品である。これは連関ミサ曲の最初の一例であるが、連関ミサ曲というのは、通常文のどの部分も、テーノルの旋律がいずれも同じ(この曲の場合は、交唱「贖い主の恵み深い御母」の最初の部分)ミサ曲のことである。最初は2つの通常文を一対にして(グローリア[Gloria]とクレード[Credo]、あるいはサンクトゥス[Sanctus]とアーニュス・デイ[Agnus Dei]、後には通常文全体をミサ以外から借用したテーノルの旋律で結び合わせるという着想は、当時としては珍しい。このミサが模範となって、ついには世俗歌曲を基本旋律として用いたもの(譜例31)さえ現れる。
中世の音楽が、グレゴリウス聖歌を基本旋律として扱うことによって、様々な発展をしてきたことを考えますと、ルネサンス時代になっても、"何か"を基本旋律に見立てて音楽を創っていくという手法は王道だったのでしょう。何もないところから新たなものを生み出すのは容易なことではありません。私もときに作曲まがいのことをしますが、編曲の方がはるかに気が楽です。
楽譜は、アカデミア・ミュージックから1982年に徳永隆男・戸口幸策による共訳で1982年に出版された
『五線譜でたどる音楽の歴史』を使いました。
使用楽器
ソプラノ モーレンハウエル キンゼカー
アルト モーレンハウエル キンゼカー
テナー モーレンハウエル キンゼカー
バス モーレンハウエル キンゼカー
バス ヤマハ メイプル
グレートバス キュング メイプル
コントラバス キュング メイプル
Papalinの多重録音で、お聴き下さい。m(_ _)m
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